鹿児島市谷山医療法人じげんじ久保クリニック(泌尿器科・内科)−前立腺肥大症、前立腺がん、尿路結石症、尿失禁・頻尿、血尿、膀胱がん、腎がん、包茎・パイプカット、生活習慣病などの治療・相談

 
 
 
 
■症 状
前立腺がんは初期では全く症状がない場合がほとんどです。それでPSAを採血しないと早期発見は極めて困難になります。また前立腺がんが進行すると排尿障害、腰痛、血尿などがみられます。
■診 断

採血によるPSA検査は必須です。異常があれば超音波検査や直腸指診をし、前立腺針生検といっていわゆる組織検査をします。この結果で確定診断となります。なお、癌が小さかったり、がんの位置が針の届きにくいところにあると、がんがあっても検出されない場合があります。
当院では癌の発見率を高め、早期発見がなされるよう肛門と陰のうの間からアプローチする超音波ガイド下の経会陰的前立腺針生検をします。直腸から針を刺す経直腸的生検では前立腺の直腸寄りのところは問題ありませんが恥骨側(腹側)に癌があった場合は見逃す可能性があります。とくに前立腺の先端部(尖部腹側)に癌がある場合は見逃しが多くなります。経直腸的アプローチでは直腸面に対して針をかなり立てないと尖部腹側には到達できないばかりか、検査後の血尿がおこらないように尿道を避けて針を刺すために尿道より遠位の前立腺部分は死角になるためです。経会陰的生検ではこのような問題が解消され、さらに直腸に針を刺さないので清潔で検査後の発熱もまず起こりません。また直腸からの出血もありません。

■治 療

組織検査(病理組織学的診断)で診断が確定したら癌がどこまで拡がっているのかの検査が必要です。病気の進行の段階によって治療法が異なるためです。CT(またはMRI)、骨シンチグラフィーで進展の度合いを検査します。骨の検査をするのは前立腺癌が骨に転移しやすいためです。

癌の進み具合(臨床病期)はおおまかに4段階に分かれます。

  • 病期A2、病期B
    前立腺内に癌がとどまっていれば、治療の選択肢はたくさんあります。手術(前立腺全摘)、ヨウ素125による密封小線源治療、放射線治療(外照射)、内分泌(ホルモン)療法など様々です。患者様の年齢や全身の状態、そして生検時の病理組織診断での癌の性質(悪性度やグリソンスコアGleason Score)を加味して患者様の希望も考慮したうえで治療法が決められます。
  • 病期C
    次の段階の癌が少しだけ前立腺の外まで拡がってはいるが転移はない局所進行癌の場合、通常、手術やヨウ素125による密封小線源治療は見送られ、内分泌療法単独あるいは放射線治療と内分泌療法の併用になります。
  • 病期D
    リンパ節や骨などの他の臓器に転移した場合では、内分泌療法が中心となります。

各治療について以下に述べます。

  1. 内分泌(ホルモン療法)

    前立腺がん治療の根幹をなします。とくに東洋人ではこの治療に効果を示す割合が高く(95%)、すべての臨床病期で有効です。前立腺がんは男性だけに発症する病気で男性ホルモン(アンドロゲンなかでもとくにフリーテストステロン)の影響を大きく受けます。前立腺癌細胞のほとんどにアンドロゲン受容体(AR)がありアンドロゲンの刺激を受けると癌が元気になります。

    そこでLH-RHアゴニスト(ゾラデックスやリュープリン)の皮下注射や内服薬(フルタミド、ビカルタミド、酢酸クロルマジノンなど)で男性ホルモンの精巣からの産生を抑えたり、前立腺がんにあるアンドロゲン受容体と男性ホルモンの結合を抑えたりして癌をやっつけるのです。また状況によっては女性ホルモン(エストラジオール)の投与をする場合もあります。さらに両側の精巣を摘出することもあります(LH-RHアゴニストの開発以前はよく行われたものでした)。

  2. 前立腺全摘術

    早期前立腺癌のスタンダードな治療です。当院でも自己血貯血を手術前にして本手術を行っています。条件のよい方は小さな切開創(7〜8cm)でミニラパロトミー手術が可能です。

    私の留学先のEmory大学泌尿器科主任教授Dr. Fray. F. Marshallが1998年にJohns Hopkins大学教授時代に発表した概念で内視鏡の力をかりながらの開放手術です。この方法は日本で洗練され東京医科歯科大学泌尿器科の木原和徳教授の御尽力でミニマム創内視鏡下手術PLES(Portless Endoscopic Surgery)として今日に至っています。安全で術後の回復が早いのが特徴です。

    現在では手術技術、麻酔技術の発展で術後の痛みはほとんどなく回復は格段に早まり、EDの問題も改善されつつあります。術後も4〜5日で退院可能なほど元気になります。

  3. ヨウ素125を用いた密封小線源治療(ブラキテラピー/brachytherapy)

    早期前立腺がん(病期B以下)に対する治療。米国では2005年には75,000人余りがこの治療を受けており、一般的な治療として既に確立されています。本邦では2003年に本治療が薬事法で認可され、同年9月に国立病院機構東京医療センター(斉藤史郎先生)にて第1例目が施行されました。2006年6月から鹿児島大学でも可能となりました。

    本治療は比較的侵襲が少なく、安全で有効な治療法でその効果は前立腺全摘除術に匹敵します。しかし放射線治療のひとつであるため、副作用が全くないわけではありません。また本治療単独で根治できる例は限られており、多くの方が該当するグリソンスコア7以上の場合は放射線の外照射を併用しなければなりません。また前立腺が大きすぎたり小さくすぎたりした場合、過去に肥大症の内視鏡手術の既往がある場合、恥骨弓の角度が狭い場合などは施行困難です。

    詳細は、http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~urology/brachy.htmhttp://www.nmp.co.jp/public/doc/pamph01.htmlをご覧ください。

  4. 放射線治療(外照射)

    治療機器の進歩によって以前にくらべるとかなり副作用少なく行えるようになりました。ただし機種は限られ原体照射のような3次元照射か強度変調放射線治療IMRT(Intensity Modulated Radiation Therapy)でなければ十分な治療は行えません。比較的体力のない方にも施行可能です。病期Bが適応になりますが局所進行がんの病期Cでも内分泌療法との併用で施行することもあります。十分な治療を行うには7〜8週の治療期間を要します。

  5. 重粒子線(炭素イオン線)、陽子線治療

    重粒子線、陽子線治療可能な施設はあわせて全国に6ヶ所で、そのうち重粒子線は兵庫と千葉の2ヶ所だけです。放射線治療のひとつ。有望な治療ではありますが建設に膨大な費用が必要なこともあり、保険適用とはなっておりません。治療費が300万円前後かかります。

  6. 高密度焦点式超音波(high-intensity focused ultrasound:HIFU)

    高密度に超音波を照射し、早期の前立腺癌を治療する方法です。密封小線源治療(ブラキテラピー/brachytherapy)が保険適用になるまではからだに優しい治療として注目された時期もありました。現在では密封小線源治療が保険適用になり、その役目は小さくなっています(HIFUは保険適用ではありません)。

    がん細胞を自然死(apoptosis)に導く密封小線源治療に比べ、高温(摂氏60〜90度)で壊死(necrosis)に至らしめるHIFUはその原理からして副作用にいまだ問題があります。HIFUは組織を高温で焼いてしまうので前立腺内を走行する尿道や近接の直腸に影響が出やすいのです。経験豊かな施設であっても尿道狭窄や尿道と直腸の間に穴があく合併症(尿道直腸瘻)などが他の治療に比べると多く報告されています。

    有望な治療ではありますので、さらに精度の高い新世代の機種の本邦への導入が待たれます。現時点ではアメリカ泌尿器科学会(AUA)でも推奨治療にはなっておりません。

  7. 遺伝子治療

    私がVirginia大学そしてEmory大学留学中に研究しましたオステオカルシンプロモーターを用いたアデノウイルス単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼによる遺伝子治療:第1相臨床試験 Phase I Dose Escalation Clinical Trial of Adenovirus Vector Carrying Osteocalcin Promoter-Driven Herpes Simplex Virus Thymidine Kinase in Localized and Metastatic Hormone-Refractory Prostate Cancer. Human Gene Therapy. 2003, 14(3): 227-241では投与局所には効いているのですが、このベクターをいかに生体内のがん病巣に到達させるのかが今後の問題でした。

    日本では岡山大学の那須先生や神戸大学の後藤章暢先生(現兵庫医大)らが米国の技術を導入し始められました。現時点ではtranslationalな域を出ませんが将来への発展が期待されます。

  8. 化学療法・化学ホルモン療法

    前立腺癌には通常の抗がん剤は効きにくいのが一般的です。しかしドセタキセル(タキソテール)はプレドニゾロンとの併用で転移を有するホルモン抵抗性進行前立腺癌において生存期間を延長した初の薬剤となりました(N. Engl. J. Med., 351:1502-1512)。またUFTのホルモン抵抗性前立腺癌への有効性が見直されてきています(Oncol Rep. 2005;14:673-6)。エトポシドなどもメトロノミックな使い方で有効性があらためて検討されています。

    リン酸エストラムスチンは以前より化学ホルモン療法のお薬として使われています。

  9. その他

    ホルモン抵抗性前立腺癌にステロイドが有効です。とくにデキサメサゾンは他のステロイド剤より有効とされています(J. Natl. Cancer Inst. 2001;93(22):1739-46)。またDouble T877A, L701H mutantの症例にはコートリルのようなcorticosteroidはかえって病状を悪化させます(Nature Rev. Cancer 1, 34-45, 2001)。

    ビスフォスフォネートbisphosphonates(ゾメタなど)は破骨細胞の働きを抑え、ホルモン抵抗性前立腺癌の骨転移の病状を和らげます。

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